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執筆者の写真早稲田ラグビー戦術研究会

イングランドVSオーストラリア

更新日:2018年12月2日

最近はTwitter上でレビューをすることが多かったので久々のブログ更新です。

今回の秋ツアーでの一番の注目チームはやはり、世界ランキング2位であり、戦術も卓越しているアイルランドでした。このチームはW杯で日本に立ちふさがる事となる強敵です。今回レビューするのはイングランドの試合ですが、アイルランドとイングランドには戦術面で共通点が多数見られると思います。日本がイングランドとテストマッチを組んだのも仮想アイルランド戦としての側面が大きいと考えています。そのため、今回はイングランドの奥にアイルランドを見据えながらのレビューをしたいと思います。



イングランド、アイルランドのDFシステム


ゲームのレビューをする前に、まずDFシステムについて簡単に言及したいと思う。

両チーム共、アンブレラ気味なDFシステムを採用している。従来の露骨に外側が飛び出るようなアンブレラではなく、全員が組織的に面として斜め内側に向かってDFをするといったシステムである。

このシステムによってENGvSARやENGvNZL、ENGvJPNではSOが自分でキャリーし、強力なFWのタックルに押しつぶされるというシチュエーションがよく見られた。従来のアンブレラDFのように外側のパスコースを潰しつつも、人が通れるほどのギャップを作ることがないため、ヒット以外のチョイスがなくなってしまうのである。

こうして、多くのチームで意思決定者とされているSOは体力や判断力を奪われ、落ち着いてゲームメイクをすることが困難になってしまっている。



イングランドDFに対するオーストラリアのAT


上述の通りのDFにはいくつかの攻略法があるが、オーストラリアのATはそれを上手く示した例である。

新型アンブレラDFでは内側にいるプレーヤーはいち早く外側のDFをサポートをしなければならないという特徴がある。オーストラリアはこの特徴に対して、ゲーム序盤にオフ9を多用することでゲーム中盤以降の外展開への布石を打ち続けた。セットプレーからも執拗に内側のチャンネルを攻め続け、前半36分についに大外へと展開した。

この時のWTBまでの展開の仕方もATラインを深めに設定し、アンブレラに来たDFの頭を超えるようなパスを用いるなどの工夫がされていた。結果として、オーストラリアはビッグゲイン、エッジからのオフ9でイングランドFWをラック周辺に集め、再度のオフ9からFBフォラウへのショートパスでトライが生まれた。この一連の流れでわかるのは、近場ATの精度が新型アンブレラを崩すための鍵であるということである。ラストパスはオフ9でDFを集めたFWプレーヤーから放られたものであるが、ここでDFを多数コミットできたのは序盤の布石が生きていると考えられる。



何故オーストラリアは負けたのか


オーストラリアは上述の通りAT面で上手く立ち回っていた。また、エリアマネジメントの面でも両チームはKゾーンではハイパントを上げるというような同様の戦術を取っていた。

しかし、オーストラリアはDF面で大きな問題を抱えていた。タックル成功率はイングランドの85%に対して、オーストラリアは77%である。

その理由として、オーストラリアがシングルタックルをベースにしているからだと考えられる。これはあえてダブルタックルに入らずに、アライビングプレーヤーがジャッカルに入るか、ラインにセットするかを決めるというものである。

イングランドの選手はフィジカルの面でオーストラリアの選手に劣っていないため、常にゲインすることができた。このゲインの積み重ねにより、オーストラリアは常に後退しながらのDFを強いられた。それによって疲労し、セットが遅くなってできた穴をイングランドに突かれ失点を重ねた。

また、オーストラリアのDFは序盤こそ上手くシャローとして機能していたものの、時間が経つにつれて組織としてのDFの精度は落ちていた。シャローにするのかドリフトにするのかという判断も遅れることが多く、中途半端なDFをしているフェイズも多々あり、それも失点の元となった。

それとは別に、イングランドの選手のカオスでの強さというものも挙げられる。ノートライに終わったが、後半28分のオーストラリアのミスからの一連のプレーはイングランドの選手のアンストラクチャーへの反応速度を強くアピールするものであった。



以上、駄文失礼いたしました。データ元はこちらです↓

http://www.espn.co.uk/rugby/matchstats?gameId=292727&league=289234


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